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マシンビジョンセンサー「Prophesee」が数十億円を調達、中国での商業化を加速 

ヒトの視神経や脳神経の原理を応用したセンシング技術(ニューロモルフィックビジョンシステム)開発の仏ベンチャー企業「Prophesee」が、シリーズCで数千万ドル(数十億円)を調達した。中国のVC「創新工場(Sinovation Ventures)」がリードインベスター、スマホ大手シャオミ(Xiaomi)ほか1社がコ・インベスターとなり、既存株主も追加出資した。 Propheseeは今後、次世代マシンビジョンセンサー技術を活用したハードウェアやソフトウェア製品の開発と商業化を加速するほか、新興市場での製品戦略を策定する。 同社は半導体、産業、ロボット、IoT、モバイル端末などのエコシステムで中国の企業と広く提携する計画だ。 Propheseeの強みは、人の目や大脳と同様の働きができる自社開発のMetavisionセンサーとアルゴリズムだ。 多くの機器の視覚技術は毎秒25枚の静止画を撮って1枚ずつ自動で解析するが、大量の不要なデータが保存され、システムのリソースを浪費するため、AI、コンピュータビジョンへの応用やビッグデータの活用といった需要に対応できなかった。 ゴルフクラブを振る動きを例に取ると、従来の画像センサーは固定フレームレート(静止画像数)でクラブとボールの動きだけでなく、背景の空、芝生まで繰り返し記録するため、設定されたフレームレートで撮影しきれなかった部分のデータは失われてしまう。 一方、Propheseeのニューロモルフィックセンサーでは各画素が非同期で独立していて、信号が振幅域の変化に合わせて画素を調整し、光量の変化や動きを感知した時のみ記録するため、消費電力、遅延、データ処理量は大幅に低減する。 同社のセンサーはコンピュータビジョン、自動運転、リアルタイム画像のぼけ除去機能で商業化を進めている。 創業者兼CEOのLuca Verre氏は「センサー技術はすでに確立しており、現在は商業化の重要な時期だ。我々のセンサーはすでに量産化しており、ソニーのスタック式3D技術を用いて画素のサイズを縮小し、解像度はハイビジョンレベルに達し、スマホなどの小型機器にも取り付けられる。さらに、Metavisionは顧客が独自にアプリケーションを開発できるよう、オープンリソースのプラットフォームも提供している」と話す。 Propheseeのセンサーはすでにさまざまなシーンで活用されている。 ・自動運転分野では、米「Xperi」の子会社がMetavisionセンサー技術を使い、ニューロモルフィックビジョンシステムをベースにした運転者監視グシステム(DMS)を世界で初めて開発した。 ・医療分野では、英コンサルティングファーム「ケンブリッジコンサルタンツ」が同社の技術を活用して自動の汚染測定システムを構築した。 ・Propheseeの視覚技術は産業のオートメーション化にも使われている。 Propheseeはパリを拠点とする。インテルキャピタル、ルノー、自動車部品大手ボッシュ傘下のベンチャーキャピタル、欧州投資銀行などから出資を受け、50以上の国際特許を持つ。 Verre氏は今後数年は中国に重点を置く予定だとして、「中国は最も重要なモバイル市場で、AI研究が最も活発な国でもあり、中国本土のAI関連会社は1189社以上で米国に次ぐ」と語った。 今回のシリーズCで出資した創新工場の李董事長兼CEOは、Propheseeのニューロモルフィックセンサーが自動運転、IoT、医療、AR、VRなどの分野で技術的ブレークスルーをもたらす可能性があると高く評価している。

  最終更新:2021/08/04  【印刷】  【キャンセル